保護者なら
「家庭でも、一貫して対応してください」
専門家から言われたことがあるかもしれません。
保育スタッフなら
「園でも、個別に関わる必要があります」
助言された経験があるでしょうか。
子どものために言ってくれていることは、
よくわかっています。
それでも、胸の奥に何かが残る。
いやいや、無理でしょ(本音)
でもそのあとでじわじわ湧き上がる。
…..私の子育てが、悪かったのだろうか。
…..これまでの保育を、否定されたのだろうか。
専門家にとっては「説明」だった言葉が
受け取る側には「判定」のように
響いてしまうことがあります。
そんなとき、私たちは、諦めて、
「あの先生とは相性が悪かった」と考えます。
もちろん、
どうしても合わない相手はいます。
無理をして相談を続ける必要はありません。
けれど、
相談場面でのすれ違いをすべて
「相性」で終わらせてしまう前に、
もう少し考えてみたいことがあります。
相談とは、本来、
専門家から正解を受け取る場ではありません。
専門家と言われる私が断見します(笑)
むしろ、
「お互いの好奇心」でやりとりを深めていく
キャッチボールのような場所です。
キャッチボールのセンスを磨くと、
きっと面談は、生き生きと輝き始めます。
専門家の言葉も、
あくまで「ひとりの人」の見立て
専門家の言葉は
機械から出てくる判定ではありません。
慎重にいくつもの可能性を並べる人がいます。
まず、具体的な対応を示す人もいます。
子どもの気持ちから説明する人もいれば、
発達の理論から説明する人もいます。
同じ子どもを見ても、出てくる言葉は違います。
専門家も、自分の性格や経験を土台にして
専門知識を使っているからです。
そのことを知っておくと
専門家の言葉は少し違って聞こえてきます。
あくまでひとつの見立てとして
受け取れるようになります。
専門家の言葉を軽く扱えばよい
という意味ではありません。
自分の人生を判定されたように
受けとらなくてよい、ということです。
相談する側から見ると
専門家は子どもを深く見通せる人に思えます。
けれど実際には
一度の観察、短い面談、数枚の記録など、
限られた材料から考えていることも
少なくありません。
それぞれが、小さな窓から、子どもを見ています。
だから相談では
一つの窓から見えた景色を正解にするのではなく
窓を少しずつ増やしていくことが大切です。
相談の場が、まるで
「ボウリング」会場になる(汗)
相談が苦しくなるとき、
お互いのやりとりは
ボウリングに似ています。
一方が、意見や要求を相手に向かって投げる。
相手がどう受けとったかはわからない。
倒れたピンの数だけを見て
うまくいったかどうかを判断する。
専門家が
「家庭でも徹底してください」と投げる。
保護者が
「そんなことはできません」と投げ返す。
どちらの側も、
相手を困らせようとしているわけではない。
それぞれの場所と立ち位置から
やりとりがうまくいかないと悩んでいます。
そんな状況になってしまったら・・・
「あっ、ボウリングしちゃっている」
笑い飛ばしてみましょう。
相談は、ボウリングではなく
ボールのやりとりを意識してみる
たとえばキャッチボールでは
相手が受けとれるところへ投げます。
受けとった側も
同じ球をそのまま返すとは限りません。
少し考えて、持ち替えて
返しやすい形にして投げ返します。
相談も同じです。
「家庭でも一貫して」と言われたとき、
すぐに「わかりました」
そう答えなくてもかまいません。
たとえば、
「その方法が必要だと考えた理由を、
もう少し聞かせてください」
「朝と夕方では、家庭の余裕がかなり違います」
「全部は難しいのですが、
一つ選ぶなら何がよいでしょう」
「その言葉を聞いて、
少し責められたように感じます」
そんなふうに、
自分が受けとったものを返してみる。
きれいな言葉でなくても大丈夫です。
きれいな直球(ストレート)でなくても
ややこしい変化球でもOKです
「少し引っかかります」
「まだ、よくわかりません」
「それは続けられそうにありません」
これも立派な返球です。
専門家の側も、球種を試してみる。
「このご家庭にはどう伝えたら良いだろう」
相手の世界に合わせて
あえてさまざまな変化球も投げてみる。
保護者と先生の側も、
「なぜ、そこを心配したのだろう」
専門家の世界に合わせてボールを投げてみる。
自分の世界を離れすぎず、
相手の世界を少しだけ想像する。
本当に必要なのは、
最初から息の合う相手ではなく、少しずつ、
投げ方を調整できる関係なのかもしれません。
届かなければ、もう一度投げてみる。
強すぎたら、少し弱くする。
取りにくかったことを、相手に伝える。
そのような小さな往復によって
相談の質は育っていきます。
相談とは、保護者も専門家も
お互いが評価されるための時間ではありません。
異なる世界から見えているものを
お互いがそれぞれ持ち寄りながら、
「この子に今できることは何だろう」
さまざまなボールを投げて、試して、
お互いに理解を深めていく時間です。
うまく話せなくてもいい。
明るく振る舞えなくてもいい。
一度でわかり合えなくてもいい。
まずは、受けとったボールを、
自分なりのボールで返してみる。
そんなキャッチボールに慣れていく。
相性が合う/合わないから離れてみる。
相談が、ちょっとだけ、開けてきます。
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